どんな自分でありたいか
「聴くこと」は単純ですが奥の深い行為です。自分や相手の声にならない声を、善悪や正誤の価値判断をせず傾聴する。これはなかなか難しいのですが、埋もれているその人の感情や願いに耳を傾けることが、レジリエンス回復の一歩になります。
私たちは「言ってもどうせ変わらない」とさまざまな声を「なきもの」として取り扱いがちです。そうやって閉じ込めた声は簡単には出てきませんが、「ガーデンワーク」などのツールによって導き出すことは可能です。忙しい中でも一瞬立ち止まり、自分や相手の声を聴くことを日常に組み込んでみませんか。レジリエンスのもう一つの鍵は、頭の中にある自分を巡るストーリーです。「私にはできない」「私はダメな人間だ」…。自分に厳しい日本社会の中で、私たちは無自覚に自分をいじめすぎていないでしょうか。その延長として、「これもできないのか」「だらだらしてダメな人間になるぞ」と、子どもたちのレジリエンスのバネを無自覚に縮ませていませんか。
これは、大人が自分自身を厳しく律するが故である気がしてなりません。頭の中で流れてくる自分へのダメ出しストーリーは周囲の人のレジリエンスにも大きな影響を与えます。まだ見ぬ可能性にふたをしてしまうからです。
インドの人身取引問題を解決する際、私たちはこうしたナラティブストーリーを転換する「ナラティブシフト」を戦略の一つに据えました。「人身取引サバイバーは無力で不幸」という通説を、サバイバー自身が「私たちの被害体験は、社会変化を生み出す」と信じ、社会にそう発信し続けることで、彼らへの社会認識を改めることに成功しました。
どんな自分でありたいか、自分を巡るどんな新しいストーリーを生きたいのかー。まずは本人がそこに目を向けることが重要です。
10年後のビジョンを自分の言葉で語れるようになった人身取引サバイバー。成長した姿は周囲にも影響を与える