「自分は誰か」焦点に
私たちがレジリエンスに着目しながら人身取引サバイバーを支援してきたのは、救出され、家に戻ったサバイバーの多くが、極度のストレスによるメンタルヘルスの問題を抱えていたからです。
やる気が起きない、体調がいつも悪い、対人恐怖、無力感、孤独感、うつ病…などが共通して見られる症状でした。この根本には、「自分は誰か」という自己の揺らぎや、自分にできることはない、他者との関係も信頼できない、といったメッセージが眠っています。
サバイバーたちのこうした症状は今の日本の子どもたちや若者に起きていることと似ている気がしませんか。朝になると体調が悪く、やる気も起きず学校に行けない。順風満帆に見えても心の中でえたいの知れない不安や嵐と闘っている。「面倒くさい」という言葉の裏側に、たくさんの気持ちを押し込んでいる…。日本の子どもや若者のレジリエンスを全国規模で測定している定期調査は存在しないものの、文部科学省や内閣府等による数々の調査から、昨今、日本の子どもたちのレジリエンスが低下傾向にあるということは言えるようで、それは私の実感とも合っています。
その原因は家庭や社会、学校教育に多様化する価値観、明日が予測しにくい激動の世界情勢などさまざまな要因が複雑に絡んでいます。原因究明も大切ですが、私はそこに時間を使うよりは、日常の中でレジリエンスを育てる取り組みを提案したいと思います。
重要なのは、何か新しいことをやるのではなく「私は誰であるか」に焦点を当てることです。揺るぎない自己を持って生きていくためには、本人が頭の中で紡いでいるストーリーと、それを「聴く」他者の存在が大切になると、私はこれまでの体験から感じています。
揺らぐ自己と向き合う人身取引サバイバーのセリナ。この数年後、彼女は自分の夢や願いを語り始めた