自分たちの可能性に気づく
インド中部の街、ライプールから車で4時間走った所に、労働搾取を目的とした人身取引のサバイバーグループ「SAANS」のオフィスはありました。40度超の灼熱の中、エアコンはおろか扇風機もない場所です。メンバーのほとんどは「不可触民」と呼ばれるカースト最下層ダリットの人たち。ダリットの子どもたちに教育を、人身取引サバイバーに政府の支援をと訴えてきた力強いグループです。でも何世代にもわたる暴力や搾取の体験から、自分たちに問題解決能力はなく、外部の優れた人たちに助けてもらわなければと思い込んでいました。どうすれば自分たちの可能性に気づけるか。私は「ガーデンワーク」をやってみることにしました。
人は皆、自分の内側に「庭」を持っています。そして私たちはその庭の唯一の庭師なのです。かつて私はいつも誰かが、例えば両親や夫が、私の庭を手入れしてくれていると信じていたので、庭師は自分だと気づかされた時、大きな衝撃を受けました。でも少しして、ワクワクする自分もいることに気づきましたー。そんな話をしながら、「皆さんの内側にはどんな庭が広がっていますか。絵に描いてみてください」とお題を出しました。
最初は描けないとぼやいていたメンバーも、次第に没頭していきました。完成後は一人一人が絵について発表し、他のメンバーの質問を受けながら、さらに自分の内面と深くつながる時間を持ちました。その後「自分たちで解決できないと思っていた問題は、今どんなふうに見えますか。自分や周りの人の庭から、何を持ち寄りましょうか」と聞いたところ、皆が目を輝かせて話し合いを始めたのです。メンバーの一人は「自分たちがこんなにも豊かなものを持っていると初めて気づいた」と笑顔で教えてくれました。
自分たちで描いた「庭」の絵を共有する「SAANS」のメンバーたちと筆者(左上から3人目)