第2回|誰もが持つバネの力

レジリエンスとは人が逆境を乗り越え成長する力のことです。逆境を事前に察知して予防したり、逆境が生じた時にダメージを最小限に収めようとしたりする力も含まれます。

特定の個人だけでなく誰もが持っていて、育てていくことができる力です。それぞれの人の認識力、性格に加えて、ケアや保護をしてくれる人が周囲に存在しているかどうかも影響します。

私がレジリエンスという言葉を初めて聞いたのは、インドで人身取引サバイバーの支援に共に取り組む、メンタルヘルスの専門家のウマからでした。彼女はレジリエンスをバネに例え、人身取引という事象は人の中にあるバネを限界まで小さく縮ませるが、バネには本来元に戻ろうとする力があると教えてくれました。

人身取引は人間が人間に価格を付け商品として売買する行為です。被害者はそのプロセスで他者からさまざまな形態の暴力と支配を受け、自分で自分のことを決める主体性を徹底的に奪われます。サバイバーを被害者としてしか見ていなかった私にとって、ウマの発言は目からうろこでした。

では、放っておいたらバネは元に戻るのかというと、そうではありません。人身取引被害者たちのトラウマ回復と時間の関係を調べましたが、放置され時間だけが経過した人たちのトラウマはむしろ悪化していました。

バネが元に戻るためには、心の回復を促すレジリエンスの取り組みが必要となります。専門用語では「トラウマインフォームド・ケア」と呼ばれ、トラウマを正しく理解した関わりであることが求められます。難しく聞こえますが、学校や地域、家庭での日常的な取り組みの中でも、関わる側の意図を明確にし、関わり方や視点を少し変えるだけで、回復の効果が期待できます。次回はこの方法について書いてみます。

人身取引サバイバーの支援に取り組むインドのウマ(右)と筆者

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